
アニメ文化がすっかり日常に溶け込み、旅行先でもご当地キャラのパネルを見かけることが増えた。
それ自体は喜ばしい流れだと思う一方で、「これは叩かれても仕方ない」と感じる光景もある。
今回は、そんな「ご当地キャラづくり」で気をつけたい点を、オタクの独断と偏見で書いてみます。
初期投資はケチらない
まず、キャラクターのデザイン段階では、住民の公募よりもプロに頼んだほうが良さそうです。
特にオタク層に刺さるキャラを狙う場合、見た目の完成度はそのキャラの認知度に直結します。
そのキャラを知らない人にとって、最初に得られる情報は「キャラの見た目+名前」しかない。
だからこそ、他との差別化を図るなら、まずビジュアルを整えることが最優先になります。
茨ひよりさんやウェザーロイドのような成功例は、スタートが早い+母体でバフがかかった状態。
地元発のファンを起用する
プロに依頼するのではなく、すでに地元で活動しているキャラを「公式化」するやり方。
本人は好きでやっている分、熱意が強く、既存のファンも付いてきてヒットしやすいです。
ただし、フリーランスとの契約なのでやりがい搾取にならないよう、報酬は誠実に支払うべき。
彼らが注目されない時期から積み重ねてきた活動時間や投資を「タダで利用する」のは避けたいです。
埼玉県公式Vtuberの「春日部つくし」さんのような例は、良いお手本だと思われます。
設定を詰め込みすぎない
キャラの設定づくりは、親近感を持たせると同時に束縛を作るため思った以上にデリケートです。
「温泉むすめ」炎上事件のように、キャラの見た目ではなく設定のせいで炎上するケースもある。
必要以上に付け足した設定はセクハラ的、あるいは時代錯誤に見えてしまうことも多い。
また、細かい設定を盛り込みすぎると、いわゆる中の人との矛盾や活動の制約にもつながります。
茨ひよりさんのように「水戸市の職員」という程度の、ふんわりした設定の方が長く愛されやすい。
キャラの性別すら明かさないという高度な方法も戦法としてはあり。
ビジュアルと年齢のバランス感覚
ご当地キャラの公共の場での掲示を考えるなら、露出度や表情には非常に慎重になるべきです。
アニメ絵に慣れていない人からすれば、「アニメっぽい絵」それだけで拒否反応が出ることもある。
個人的な感覚としては以下、全世代が見ても不快にならないラインを意識したい。
×「制服、水着、膝より上の足の露出、肩より上の方の露出、息遣い、上気した顔」
△「未成年、女の子同士、アイドル設定、地元イベントへの参加」
○「ちびキャラ、返礼品での起用、地元番組やYoutubeでの活動」
ちびキャラを活かす
ご当地キャラを依頼するなら、立ち絵のバリエーションを多めに用意しておくと何かと便利です。
自治体の掲示物やイベントなどで、「使いたいけど合う素材がない」というケースは多いと思われる。
作風を束縛しないために複数のイラストレーターに描いてもらうのも良い(例:初音ミク)
AIを使って派生ポーズを作るのも今の時代ならでは(もちろん著作権や原作者の許可は必要だが)
性別や掲示位置の配慮
男性キャラが苦手な男性、女性キャラに抵抗を感じる女性――性別にまつわる「嫌悪感」は難しい。
バランスを取るなら、女性キャラでも“ちびキャラ寄り”にしておくのが無難だと思われる。
また、駅前など人目の多い場所にキャラパネルを置く際は、「地元の理解」をとることも重要。
それを望まない人の目には入らないようなゾーニングを明確にした掲示を工夫したい。
キャラが目当ての客は見えにくい場所にあっても、自分から探してくれるため。
客層と世代を読む
若い層が多い地域ではオタク文化が受け入れられやすいが、その分「自重」の意識が薄れがち。
観光客の属性(特に海外勢)によっては、治安面の懸念もある。
界隈の自浄作用が機能するか、古参オタクの方がそのあたりの感覚をよく理解しているかもしれない。
深夜アニメ、エロゲなどオタクが忌避された時代の人間が特に、忌避と自重の文化を持っていると感じる。
逆にジャンプ系やアニメ文化が一般的になった世代は、アニメなどに恥ずかしいという感覚はない。
すべての世代が納得するようにするのは難しいが、ゾーニングとキャラ設定の配慮は必要と思われる。
終わりに
ご当地キャラは地域を盛り上げる大逆転の力を持つ一方で、誤れば一瞬で炎上しかねない。
だからこそ、そこに求められるのは「誠実さ」と「ほどよい距離感」だと思う。
「萌え」の力をうまく使いながら、誰もが心地よく感じるデザインを探ること――
それが、これからの時代に必要な「ご当地キャラのかたち」ではないだろうか。



