【目の仕組み】見る・色・進化から考える身近な視覚の不思議

学生生活

上野の国立科学博物館で特別展「いきもの超ワールド展」が開催されており、行ってきました。

さすが科博とNHKのタッグだけあって面白い、特に興味を惹かれたのは「見る」のコーナー。

日ごろから疑問に感じていた「目の仕組み」「見る」「色」について、自分で整理してみます。

目の構造とピント合わせ

人間の目は、水晶体(レンズ)や虹彩を備え、網膜と視神経で外界の情報を脳に伝えます。

よく「カメラの仕組みと同じ」と例えられますが、実際には違いがあります。

カメラではレンズ全体を前後に動かして焦点を合わせますが、目の場合は毛様体筋が水晶体の厚みを調節する仕組みです。

遠くを見るときは筋肉がゆるんでレンズが薄くなり、近くを見るときは筋肉が収縮してレンズが厚くなります。

  • 近視は眼軸が長いなどで光の焦点が網膜より手前に合ってしまう状態
  • 遠視は眼軸が短いなどで焦点が網膜の後ろに合う状態

また、老眼は、水晶体が硬くなって厚みを変えられなくなる現象で、近くにピントを合わせづらくなります。

網膜と視細胞:映像を感じる仕組み

網膜には、暗い場所で働く桿体(かんたい)細胞と、明るい場所で働く錐体(すいたい)細胞の2種類の視細胞があります。

桿体は感度が高く光の強さだけを感じ、色は分かりません。

一方、錐体は色を識別でき、ヒトにはL錐体(長波長寄り=赤色系)、M錐体(中波長寄り=緑色系)、S錐体(短波長寄り=青色系)の3種類があります。

これらが受け取った光情報は視神経を介して脳へ送られ、私たちは初めて「像」として認識します。

興味深いのは、網膜に映った像は上下逆なのに、脳は自動的に補正していることです。

プリズム眼鏡を使った古典的な実験では、上下逆さまに見えるメガネをかけた被験者が最初はフラフラするものの、数日~約10日間で慣れて普通の視界のように認識できるようになったと報告されています。

これは、脳が最初から逆転した像に対応する“神経回路”を形成している可能性を示唆しています。

色覚とオプシン:光を“色”に変える分子

https://www.nitech.ac.jp/news/press/2022/9967.html

錐体細胞に含まれるオプシンと呼ばれるタンパク質が、色の感じ方のカギです。

オプシンはGタンパク質共役受容体(GPCR)の一種で、ビタミンA由来の11-シス型レチナールを結合しています。

光子がレチナールを吸収すると11-シス型がオールトランス型に異性化し、その構造変化がオプシンを活性化してシグナル伝達が始まります。

種ごとにアミノ酸配列が異なるオプシンが存在するため、吸収する波長(色)もそれぞれ異なります。

ヒトの場合、L錐体は赤~黄寄り、M錐体は緑寄り、S錐体は青寄りの光に感度を示します。

なお、夜間照明に赤いライトを使うのは、桿体視物質(ロドプシン)が緑~青寄りの光に敏感で、赤い光はほとんど刺激しないためです。

赤い光を当てても桿体が休んでいて、暗所視力が保たれるからです。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/16/012700001/012700001/?P=5

生物の多様な視覚:紫外線から偏光まで

動物によって視覚能力は多彩です。多くの魚類・両生類・爬虫類・鳥類は、紫外線(UV)を感じる錐体細胞を加えた4種類の色覚を持ち、ヒトには見えない紫外線領域まで見ることができます。

実際、「魚には人間には有害な紫外線すら見えている種がいる」とも言われます。さらに、驚異的なのはシャコの視覚です。

シャコは16種類以上の色受容体を持ち(人間は3種)、UV光や偏光も検出します。最新の研究ではなんと33種類以上のオプシンタンパク質が検出され、視覚システムの複雑さが明らかになっています。

このように、より多くの光受容器を持つことで環境から得られる情報量を増やす進化が起きた一例といえます。

また、一部の動物は赤外線(IR)を「視覚」として捉えます。

例えば、マムシやガラガラヘビなどのヘビは顔面にピット器官(頬窩・口唇窩)を持ち、周囲の温度分布を感知します。

ピット器官は、赤外線による温度差を神経信号に変えて脳に送ることで、暗闇でも獲物の位置を捕らえます。

これは赤外線を可視光ではなく熱センサーとして利用する仕組みで、ヒトには見えない波長域の情報を利用した「赤外線視覚」の一例です。

目の種類と進化:単眼・複眼・カメラ眼

動物界には多様な眼が存在します。

単眼(Simple eye)

光受容細胞が浅い杯状構造を作り、そこにレンズを備えた原始的な眼です。単眼はレンズと網膜はありますが、ピント調節機能や絞り(瞳孔制御)は持ちません。環形動物や多くの軟体動物、節足動物のなかに見られます。

杯状眼(cup eye)

窪みが深くなり、レンズの代わりに小さい穴(ピンホール)が光を通す構造です。オウムガイのピンホール眼では、上からの光が網膜の下側に、下からの光が上側に届き、像の上下関係が維持されます。ただし光量が少ない欠点があります。

複眼(Compound eye)

トンボやミツバチに見られる構造で、小さな個眼(オマタディア)が数千個集まって半球状に配列された眼です。各個眼には微小なレンズがあり、集まった像を脳で統合することで広い視野が得られます。個々のレンズが小さいため焦点距離が極端に短く、ほとんどピント合わせなしに全体像を捉えられるメリットがあります。動きの検出にも優れていますが、解像度は低めです。

カメラ眼(Camera eye)

ヒトやタコなどが持つ大型の眼で、大きな可動レンズ・虹彩・広い網膜を備えた構造です。カメラのように1枚のレンズで像を結び、ピント調節(水晶体の厚み変化)も可能です。これにより遠くのものも鮮明に見え、高い解像度が得られます。

眼の進化は、「単純な光検出器」から始まり、杯状型、ピンホール型、レンズを持つカメラ眼へと複雑化してきたと考えられています。

すべての眼は基本的に同じ光受容分子(オプシンなど)を使いながら、何度も独立して進化してきたことがわかっています。

白目の役割と進化的意義

「白目」は表情を作るためだけではありません。目の外側の白い部分は強膜と呼ばれ、眼球の形状を維持して網膜や視神経を守る丈夫な壁です。

さらに外眼筋が付着する土台にもなり、眼球を自由に動かすために欠かせない構造です。

一方で、白目自体は光を取り込む役割はなく、実際に入る光の量は虹彩(瞳孔)で調整されます。

興味深いのは、その「目立つ白目」の進化的意義です。

多くの野生動物では白目が目立たず、黒目(虹彩部分)が大きく見えます。

これは視線を隠す戦略に有利で、獲物や捕食者に自分の注視点を悟られにくくする効果があります。

一方で人間は白目が目立つように進化しました。

ヒトは群れで協力しながら生活する社会性が高い生物であり、視線の共有が重要です。

白目が大きいと、相手に視線の方向が伝わりやすくなります。

そのおかげで、仲間と同じ対象を見る・危険を知らせ合う・指差しや視線で情報を共有する・相手の意図や感情を読み取る、などの高度なコミュニケーションが可能になりました。

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